10分程度の短編フィルム4本を収録。スピード感のある映像編集、サウンドはすべて作品のためのオリジナルトラックを使用。音楽と映像とダンスが見事にマッチした秀作です。収録作品「Once
in a Blue Moon」では、実際の3組の母娘が甘いジャズの音にのせて戯れる。舞台美術も要チェック!ノスタルジーと哀愁が、見終わったあとに気持ちいい溜息をつかせてくれるオシャレな作品。
■REVIEW
恥ずかしながら筆者は、これまで「ダンス・フィルム」という表現ジャンルにほとんどなじみがなく、さらに日本でも度々来日公演を行っている国際的に評価が高いコレオグラファー、スー・ヒーリーのダンス公演自体も見たことがなかった。なので、今回DMJからリリースされたDVDでヒーリーの代表作4作品を、初めて何の先入観も持たず新鮮な驚きや発見とともに見た。
それぞれは10分程度の短編フィルムで、ダンサーの身体のクローズアップや微細なムーブメントが、フィルムの撮影編集効果と融合し、意表をついたシーンの切り替えや展開によって緊張感に満ちた異次元空間を創り出している。劇場でダンス公演を体験するのとは違った不思議な臨場感があり、まるで時空間がよじれてしまったような感じだ。最初に収録されている「Niche」(2002)は、サスペンスとSF映画を併せたような、不気味な空気を持った作品。「Fine
Line」(2003)は、シンプルな舞台構成だが、ダンサーの複雑なムーブメントとカメラ技術の融合による、ダンス・フィルムの醍醐味が堪能できる秀逸な作品だ。
4作品の中でも最も異彩を放っているのが最後に収録された「Once in a Blue Moon」(2006)だろう。「Three
Times」に出演する3人の女性ダンサーと彼女たちの母という異質な組み合わせで、3組の母と娘が甘いジャズの音にのせて戯れるうちに、ノスタルジーとメモリーが交錯するファンタジックな作品である。
原万希子
インディペンデント・キュレーター/TOKYO ART SPEAK主宰
■PROFILE Sue Healey (スー・ヒーリー) ディレクター/振付家
パフォーマー、講師、振付家そして映像作家でもあるスー・ヒーリーは、過去20年の間、オーストラリアコンテンポラリーダンス界の最先端で活躍してきた。ニュージーランド出身の彼女は、The
Victorian College of the Artsを卒業した後、メルボルンでDanceworks(1983-88)を創設する。その後Vis-a-Vis
Dance Canberraと Sue Healey Companyの芸術監督となった彼女の活動はオーストラリア内に限らず国際的であり、多くのダンスフィルムや舞台作品、また特別な場所に適したパフォーマンスを制作している。
1999年と2000年に名誉あるオーストラリアカウンシルフェローシップを受け、2000年にメルボルン大学で振付の修士号を取得した。彼女は、アメリカ、イギリス、中国、日本そしてニュージーランドでも公演を行なっている。
ダンスフィルムの他、ローズ・バーン主演の長編映画『The Goddess of
1967』では振付を担当している。またオーストラリア・キャンベラのクアンタムリープユースコレオグラフィックアッセンブルのドキュメンタリー映画『Quantum
leapers』も制作している。この作品とその他のショートダンスフィルム作品は全て2005年にABC televisionで放映された。
■収録作品
Niche
[2002年/10min]
密かに存在する秘密のダンス−淵、表面、隙間。
Fine
Line
[2003年/10min]
彼らが出会うのは、線でできた見えない家。構造の情事−それは心理的なジオグラフィー。
Three
Times
[2005年/7'30min]
3人はそれぞれの時間に存在している。時にリズミカル、連続的、異常、ループ−危うさを漂う。
Once
in a Blue Moon
[2006年/10min]
Three Times
のダンサーとその母親達。記憶、そして親との消すことのできない関係を描き出す。